矢野顕子のあの特徴ある声が個人的に今ひとつ好きになれなくて、彼女の楽曲をまるで知らない。従って、監督・脚本・編集を担う深田晃司がインスパイアされたタイトル曲についてもこの映画を観るまで全く聴いたことがなかった。そんなわけで私のなかでは矢野顕子と深田晃司のラインが容易に結びつかず、そこに何かしらの興味をかきたてられた 良いとか悪いとか、正しいとか間違いとか、単純にスパっと割り切れないグレーなところを描写する才能に長けている。それが、「淵に立つ」と「よこがお」を鑑賞しての深田晃司に対する率直な印象だ。本作の登場人物たちが思わず取ってしまう、後から自己嫌悪に陥るような言動の数々には、白黒つけられない…