著者は「桶川ストーカー殺人事件」「殺人犯はそこにいる」などのドキュメンタリーで高い評価を得ているジャーナリストである。本書は、シベリア抑留体験がある亡父が残したメモに書かれた「だまされた」の文字の意味を知るべくシベリア鉄道の旅に出た旅行記だ。 ミステリー小説のような導入で始まる本書は、旅行記としては、同行者で盟友である「センセイ」との軽妙な掛け合いも楽しいおっさん二人の愉快で笑える旅日記と、大日本帝国が日清、日露戦争を経て拡大した領土を第二次世界大戦によってすべて失うまでの戦争の歴史を一望できる構成になっている。 著者は、一連の戦争のありさまを、シベリア鉄道をキーワードに俯瞰していく。読んでい…