はじめに 昭和7年4月、慶應歌舞伎研究会に入会する 慶應歌舞伎研究会の機関誌『浅黄幕』 『浅黄幕』復活号(昭和7年11月)に載った青年歌舞伎の劇評 (2023年11月16日:末尾の注釈欄に訂正と追記を記載しています。) はじめに 1930年代新宿の青年歌舞伎について書き連ねたいとずっと思っていた。十数年来の宿願であった。 新宿新歌舞伎座(新宿第一劇場)で青年歌舞伎が始まった昭和7年(1932)は、戸板康二が慶應義塾の予科に入学した年でもあった。毎興行見物したという青年歌舞伎について、戸板康二は後年、《まことに貴重な歌舞伎教室だった。》と愛着たっぷりに回想している(『思い出の劇場』、「新歌舞伎座…