ここに、十数人のたくましい男たちがいる。 彼らは五年間にわたって、夏の数十日を人跡未踏というべき僻村の山で過ごした。道をつけ橋を渡し、テントを張り便所を作り、自家発電所とドラムカンの浴場までしつらえると、いよいよ仕事にとりかかる。 その仕事とは、明治三十七年に測量した際の境界線を現地で探し出し、これを再度測量し、確定していく作業である。推理の道具は六十四年前の測量簿と、そのとき誰かが残したであろう微かな痕跡。当時の測量隊が支障木としてした切り払った木や枝の跡や、木標を打った際の周囲の盛土などを手がかりとして、現地での測量を進めていく。 昭和二十七年から二十年がかりで行う境界確定は、富山県の有峰…