貝原益軒を書こう 七十四 中村克博 根岸たちは平戸の船での会合を終え、厦門の行きつけの茶屋でくつろいでいた。店の奥で五つの卓に分かれてたむろしている。日差しが西に傾いて陽は店の奥までとどいていた。十人以上の若い日本の傭兵たちは大きな声で話すこともなく、うれしそうに茶を飲んでいる。ほかに五組ほどの男女の客がいてにぎやかに茶を飲んでいた。そこに三人づれの新しい客が入って来たが店がいっぱいなので出ていった。 背の高い店の娘が柳生の松下のそばにやってきた。厦門の言葉で、隣の飯店に食事の用意ができ、それに寝泊りをする部屋も準備していると伝えた。傭兵の頭目が厦門語を日本語になおして松下につたえた。 佳代が…