浅からぬ 下の思ひを 知らねばやな なほ篝火の影は 騒げる 明石の上に by 源氏の君 〜わたしの深い気持ちを御存知ないからでしょうか 今でも篝火のように ゆらゆらと心が揺れ動くのでしょう 【源氏物語618 第19帖 薄雲49 完】 住み馴れるにしたがって ますます凄い気のする山荘に待つ恋人などというものは、 この源氏ほどの深い愛情を持たない相手をも 引きつける力があるであろうと思われる。 ましてたまさかに逢えたことで、 恨めしい因縁のさすがに浅くないことも思って歎く女は どう取り扱っていいかと、 源氏は力限りの愛撫を試みて慰めるばかりであった。 木の繁《しげ》った中からさす篝《かがり》の光が…