舞台袖で出番を待つ。 目をつむり、息を潜めて、集中を高める。 舞台では物語が進んでいる。 俳優が演じ、灯が輝き、音が響く。 道具がその世界を浮かび上がらせる。 客席には物語の証人が幾人も座っている。 俳優と観客、お互いの息遣いが世界を構成していく。 そしてそこに今から飛び込んでいく自分の息を合わせる。 舞台袖という現実空間から、物語の中という虚構空間へ飛び込む自分の呼吸を、静かに、慎重に合わせていく。 歩を進め、視界が開き、衆目に曝される肉体に意識を払い、自分は舞台袖にいた人間とは違うキャラクターになって呼吸をし始める……。 ーー 昨日は客演の初通し稽古でした。 これまでは割と重く苦しい雰囲気…