2021年8月号掲載 毎日新聞契約記者(当時)/藤原章生 老子の言葉を8年ぶりに読んだ。最近、ある勉強会の講師が親鸞を語る際、老子の言う「無為」に触れた。この無為という考えが仏教家の親鸞から哲学者スピノザ、そして親鸞を書いた評論家、吉本隆明にまで大きな影響を与えたのではないか、と説いていた。 講師が引用したのは、ちくま新書から2018年8月に出た「現代語訳 老子」という本だった。老子の言葉を訳した歴史学者、保立道久さんは「無為」についてこう書いている。 <『老子』の人生訓は、この「無為」の心術(しんじゅつ)をどのように身につけるかということなのだが、本章は、その基本をまず、「欲せざるを欲する」…