訓読 >>> 熟田津(にきたつ)に船乗りせむと月待てば潮(しほ)もかなひぬ今は漕ぎ出(い)でな 要旨 >>> 熟田津で、これから船出しようと月の出を待っていると、潮の流れさえ私たちの待ち望んでいた通りとなってきた。さあ、今こそ漕ぎ出しましょうぞ。 鑑賞 >>> 作者の額田王(ぬかだのおおきみ)は生没年未詳ながら、斉明天皇の時代に活躍がみとめられる代表的な女流歌人です。はじめ大海人皇子(おおあまのおうじ・後の天武天皇)に召されて、十市皇女(とおちのひめみこ)を生みましたが、後に天智天皇に愛され、近江の大津宮に仕えました。額田王の「王」という呼び名から、皇室の一人とも豪族出身とも取れ、また出身地も…