令和5年度『収穫祭』第1位(2名同時受賞) 人新世の空 尾内以太 冬深し羽は上手に落ちるため 早世の道へ折れずに寒卵 寒鴉血は空気より重たくて 五分後の鳥を目の追う木の芽風 はばたきにまぎれはくもくれんひらく 鳥の体温ほどの語や春の闇 鳥雲に黄色い線のそとがわへ 風光る化石となった青い鳥 とりたちの手は春風をつかむもの かもめみな鍵のかたちや春夕焼 虹の端をくわえて鳩の帰還かな くちばしのきしみつづける熱帯夜 鳥は手紙のうぜんかずらの青空 炎天はミサイルだけを残しけり 冷蔵庫ひかりの層を積もらせて 風の上に風あるというソーダ水 夏終る野鳥観察しておれば 海鳥は脳を持ちさり敗戦忌 天の川放った石…