翻訳家(スペイン文学;ラテンアメリカ文学) 琉球大学教授;東京外国語大学名誉教授 昭和15年8月14日生 出生地:大阪府大阪市 血液型:A 平成14年12月13日没(62歳 横行結腸がん) 没地:文京区の病院 東京外国語大学スペイン語学科卒;マドリード大学大学院修了 在学中、会田由の講義でケベードを読んだことからスペイン文学の道へ。昭和58年3月より1年間ペルーカトリック大学客員教授。
展覧会『横山芙實展「野分奔る」』を鑑賞しての備忘録アートスペース羅針盤にて、2022年12月12日~17日。 横幅3.9メートルの表題作《野分奔る》や横幅3.2メートルの《日々が凪いでいる》など大画面の作品を含め、いずれも土絵具と岩絵具による絵画全15点で構成される、横山芙實の個展。 冒頭に掲げられた《母子像》(652mm×530mm)は、胸の前に娘を抱きかかえる母親の胸像。限られた線と絞られたで立ち上がる静謐なイメージには、筆跡をはっきりと残すことで変化を与えられている。とりわけ丸い顔に杏仁形の目により仏画の趣がある。赤や茶の褐色で塗られた背景は、母子を取り巻く闇のようにも、母子から発される…
典型を描いた名作 蔵書を大量に売却・廃棄しています。本棚の数が減るくらいの大仕事になっています。 長年にわたり我が書架にあった書物との別れは、やはり私にとって大きな出来事です。寂しさもあれば、これを機に新しい生活へと踏み出す期待もあります。まるで一つの小説のようです。 以前、twitterをフォローしているブロガーが、本を処分する時は書評なり感想をブログ記事にすればネタを補充できていい、とツイートしていました。すばらしいアイデアだと思いますしたし、上記のように出会いと別れにはさまざまな思いがありますので、それを記録の意味もこめて綴っておきたいと思いました。 前回は伊藤整の『日本文壇史』(講談社…
セルバンテスのドン・キホーテを、岩波少年文庫の牛島信明訳による抄訳で読んだ。 風車に突撃する偽騎士の話だということが教養としてひろく行き渡っているのは言うまでもない。しかしそれにとどめておくにはあまりにもったいない。この歳まで読まずにきたことを惜しみつつも、これからはドン・キホーテとサンチョ・パンサの教えを胸に刻んで、誠実で実直に生きていこう。そう願うことを促して、素直にそれを受け入れられる。狂気に取り憑かれた心こそが、人間のもっとも優れた美徳をあきらかにするという逆説によって、いまもむかしも変わらないこの世の不条理を生きることの価値を伝えているようだ。 前半部、たしかに狂人というほかないほど…
舞台『血の婚礼』東京千秋楽公演(10/2マチネ)を観ました。 前回(9/22)観劇した時は最後の暗転で思わず天を仰ぎましたが、今回はもはや上を向く余裕もなく、項垂れてしまいました。 素晴らしかった。 舞台上の情動が胸に突き刺さる、鮮烈な公演でした。 そして、一回、二回と観る度にメッセージを異にしたこの作品は、結局三度私の中で印象を翻しました。 あくまで私にとっては、ですが、興味深い発見が3つ。 それらはすべて、「役割を演じる」ということについてでした。
■今日買った本。計10220円。 a)第13回くれブックストリート2022ヒトハコ古本市にて。4750 1・谷川俊太郎・文、中村ノブオ・写真、なかのまさたか・AD『あしあしはだし』福音館書店 ¥200 甘茶 2・安江りえ・文、いまきみち・絵『たこらすとまいかちゃん』福音館書店 ¥200 甘茶 3・金尾恵子・作『せなかにのぼれ』福音館書店 ¥200 甘茶 4・中村至男・作『たなのうえひこうじょう』福音館書店 ¥200 甘茶 5・中島睦子・作、こうやすすむ・監修『みかん』福音館書店 ¥450 甘茶 6・甲斐みのり・監修/著『静岡県富士宮市地元出身・甲斐みのりのみやめぐり』富士宮市企画戦略課地域制作…
推しで世界を谷折りしがちです。 先日、シアターコクーンの2階席に初めて座りました。 推しである木村達成さんの出演舞台『血の婚礼』を見るためです。 ところが席についてすぐ、「私はここに来たことがある」と思いました。 なんだろう、これがデジャヴというものか。それにしてはこの景色、舞台が遠くて近いようなこの距離感、そしてこの高揚感、あまりにも“知っている”。デジャヴとは斯様にもはっきりと「二度目」と認識するものであるのか…… ……。 ………………?? ………………………… ……いや私ここにむかし自担の舞台観に来たんだった〜!!あの時も2階席だった〜!! てなことがありまして、すっかり忘れていたんです…
牛島信明訳岩波文庫版『ドン・キホーテ』読書会もついに最終回。最終巻にたどり着いた。ドン・キホーテの狂気は次第に弱まってゆく。物語には盗賊の頭ロケ・ギナールのような魅力的な人物が登場しドン・キホーテは脇に退く場面が多くなる。そして《銀月の騎士》(じつはサンソン・カラスコ)との一騎打ちに敗れてついに鎧を脱ぐ。サンチョを引き連れ意気消沈して故郷の村に戻るドン・キホーテのなんと哀れなこと(p.299、p.301の挿絵!)。まるで甲羅から引きずり出されたカメのようである(?)。熱病に冒されて死の床で「正気に戻り」敬虔なキリスト教徒として死んでゆく結末を寂しい限りという意見があいついだ。これでいいのかドン…
9月15日からシアターコクーンで上演される「血の婚礼」が楽しみです。 horipro-stage.jp 8月10日のマジの婚礼みたいだったトークショーにも参列して、ワクワクが留まることを知りません。 原作のある作品をみる時、原作を読んでから観るかまっさらな状態で観るか、迷いますよね。 今回は話がシンプル(なのかな?ほんとに?)らしいけど、原作が戯曲で難しそうだし物語の舞台であるスペインのことを知らないし、なによりあらすじ漫画読んで全然わからなかったので、読んで色々調べておこうと思いました。 あらすじ漫画↓ honto.jp 舞台のビジュアルをもとに描かれた舞台のあらすじ漫画って初めてみた。すご…
展覧会『坪山小百合「呼吸のアウトライン」』を鑑賞しての備忘録TAKU SOMETANI GALLERYにて、2022年6月10日~26日。 呼吸をテーマとした絵画21点を展観する、坪山小百合の個展。 《Breathing outline》(1300mm×1940mm)には、茶でまとめられた色彩で、左右に向かい合うように並ぶ2人の女性の腰から顎にかけてのシルエットと、そこに培地で培養された細菌のようなイメージが重ねられている。闇の中に浮かび上がる女性の身体には乳房や腕も表わされているが、僅かな明暗は施されているものの極めて平板に表わされている。赤みを帯びた茶色からは踊る埴輪のような素焼きが想起さ…
今日は牛島信明訳、岩波文庫版『ドン・キホーテ』第3巻を読む。前巻33章から本巻35章に挿入される小説「愚かなもの好きの話」が一読してなんとも居心地がよくなかった。アンセルモがなぜ親友ロターリオに自分の妻カミーラを誘惑させようとするのかが、よくわからないのだ。村上春樹の「イエスタデイ」やイヨネスコの不条理劇が脳裏をよぎる。だが物語は17世紀初頭だし、もう少しロターリオの情動の動機が説明されていてしかるべきではないか、と思ったのだ。議論のなかで、漱石の『こころ』などが持ち出されたが、うーん、あまりピンとこない。アンセルモとロターリオの同性愛的な関係(たとえば第2巻p.309「独身だったころ二人はそ…
セルバンテス読書会第2回。『ドン・キホーテ』前篇第22章から第34章までを収める牛島信明訳岩波文庫版第2巻を読む。ドン・キホーテは果たして完全な狂人なのだろうか。そうとも言えまい。憂い顔の騎士は徹底的に狂人を、思い姫に恋焦がれる騎士を演じようとしているのだ。ドン・キホーテはサンチョに語る。「アマディスを真似て、ここで絶望のあまり激情の狂乱状態におちいった男を演じるつもりじゃ」(p.98)、と。「だから友のサンチョよ、わしがこれからやろうとする、いかにも稀有にして幸せな、前代未聞の模倣を思いとどまらせようとして無駄な時間を使ってはならぬ。そう、わしは狂人じゃ。」(p.99-100) 司祭はそうし…
明治大学管啓次郎研究室主催の長編小説輪読会(と勝手に名付けました)第二弾はセルバンテス! 20世紀初頭のフランスから17世紀初頭のスペインへとタイム・スリップである。『ドン・キホーテ』は児童書版で読んだきり。大人になってから一度会田由訳で挑戦し、挫折しているので、今回がんばろう。岩波文庫版牛島信明訳は瑞々しく現代的で読みやすい。 愛馬ロシナンテに跨がりサンチョ・パンサを従えたドン・キホーテの抱腹絶倒の珍道中を読み始めると、川崎のぼるの「いなかっぺ大将」を思い出した。柔道家を目指す大ちゃんこと風大左衛門が数々の失敗をやらかすのだが、小学生の頃、テレビを見ながらこの主人公はなんでこんなにまぬけなん…
これの続き 第2巻を読んだ。 ドン・キホーテ 前篇2 (岩波文庫) 作者:セルバンテス 岩波書店 Amazon 1巻でまだ第3部終わってなかった!普通に続いてた 第22章。遂に国家権力に歯向かってて草王様にかしずくのが騎士だとか言ってるのに・・・ガレー船へ引きたれられる最中の囚人たちの罪状は一人ひとり個性的で面白い。特に最初の囚人がヤバい あっしの恋人というのは、まっ白な肌着の一杯つまった洗濯籠でね、そいつにぞっこん惚れこんで、かたく抱きしめあったってわけでさ。あれで、お上の手で仲を裂かれなかったとしたら、あっしは今でもあれを抱いたままで、自分から手放すことは決してしなかったでしょうよ。 p.…
展覧会『VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─』を鑑賞しての備忘録上野の森美術館にて、2022年3月11日~30日。 学芸員や研究者などによって推薦された40才以下の作家31人と2組の新作を展示。 张小船(Boat Zhang)の《CLOSEDからCLOSEへ(私はペストで私はペストキラー)》は、閉ざされたガラス扉に掛けられた"CLOSED"の案内板を描いた油彩画に、作品の概要の説明、ディスプレイに表示された文字が拡大によってぼけたような効果を持つ「永住」の文字、ヨガの「デッド・バグ」のポーズと仰向けの虫とを取り合わせたイメージの3点を取り付けたものと、絵画の隣に設置された…