小荷駄で荷を運ぶ「馬借」に対して、牛に車を曳かせて運搬する業者のことを「車借」と呼んだ。有名なのが「白河車借」、そして拙著にも出てくる「鳥羽車借」である。 坂本の馬借の起源が「馬の衆」といわれる、日吉社の神人たちだったとすると、車借の起源は何なのだろう。牛に車を曳かせる、という点から考えると、真っ先に頭に浮かぶのは、平安期の貴族の乗り物・牛車である。 平安貴族たちは、牛車を誰に曳かせたのだろうか?この時代においては、「牛追い童」という職能民がこの役割を果たしていた。平安期は「職能」というものがようやく機能してきた時代である。平安初期の「牛追い童」には「官庁に属していた者」と「寺社や貴族の家に属…