【第5章 首の記憶】~海原忍と小夜子~ 海原忍の人生の記憶は『くび』という言葉から始まっている。忍6歳の時であった。 忠明が室戸に向かった頃、忍の父五助は、飛夫、山辺らと一緒に紀州へ3t足らずの小さな帆船でシビ立ち釣りに出る。が。飛夫、山辺の二人が流行りのコレラにかかった挙句、やっとの思いの帰路で船はシケに会い難破してしまう。そして、更なる悲劇が起こる。二人の介抱をしていた五助がついにコレラに感染し絶命。その五助のお陰で運よく生き残った二人は、沈没寸前の船にしがみついているところを通り掛かった土佐のマグロはえ縄船に助けられる。その時、「早う仏さんに海に沈んどいてもらわんと…」と慌てる山辺に逆ら…