アメリカからイギリスに移り住んだ詩人、T・S・エリオット(1888~ 1965)の『荒地』という詩は第一次大戦後のヨーロッパの荒廃を描いたものといわれるが、コロナ禍の現代にも通じる。 4月は残酷極まる月だ リラの花を死んだ土から生み出し 追憶に感情をかきまぜたり 春の雨で鈍重な草根をふるい起こすのだ。 ――――――――――― 空虚の都市 冬の夜明け、鳶色の霧の中を ロンドン・ブリッジの橋の上を群衆が 流れたのだ、あの沢山の人が、 死がこれほど沢山の人を破滅させたとは思わなかった。 「埋葬」(西脇順三郎訳『世界文学全集』河出書房) 第一次世界大戦の戦死者は1600万人、戦傷者は2000万人以上と…