狐憑 作者:中島 敦 Amazon まだ文字というものができる前のスキュティア人(スキタイ)の話。本当に短い数ページの作品なのだけど、創作と言うものが人間の本能に基づいたものであって、当然のことながら文字ができる前より早くに始まり、しかし記録にも残らず忘れ去られた詩人が大勢いたであろう事実に自分の足元がなくなってしまったような感覚を覚える。自分が思うこの本の主題は二つ。一つは「狐憑」。見たことのないものについて語るその姿は古代の人達にとって何かが憑いたとしか思えなかったかもしれない。しかしそのうちのいくつかは人間の想像力が作ったものであり、創作は人間の本能のひとつであって、きっと中島敦本人もこ…