1902年(明35)三新堂刊。泥棒伯圓の弟子の一人、松林伯知(しょうりん・はくち)の講談速記本。山王とは現在の都心にある山王日枝神社で、江戸時代は氏神として祀られていた。付近に越後村上藩の内藤氏の屋敷があった。ある時この地で怪猫に惨殺される事件が起き、家老の御曹司島田與三郎がそれを退治して名を上げた。奥女中のお千代は美人ながらも思いを募らせ、恋文を下男に託すが、それが不良侍の長田又十郎の手中に落ち、なりすましの文通が始まる。これだけでも十分な恋騒動話になるが、怪猫の復讐心が内藤の家来たちの上に襲いかかる。猫嫌いな副主人公でもある腹黒い又十郎の方がむしろ祟られるというのも可笑しい。後半は房総半島…