1919年(大8年)共成会出版部刊。大正期の女性ミステリー作家と思われるが、この作品1冊のみで、生没年も不明。タイトルに疑問符?を使っている点も気になって読んでみた。ある殺人事件をきっかけに重要人物が身を隠すという設定はミステリー小説の手法のパターンの一つでもある。主人公の青年は新聞社勤務だが、その事件の直前まで恋人同士だった女性が容疑者の汚名を帯びたまま消え去ってしまったのだ。数年後ふとした事で再会するが、逃亡の謎を頑なに語ろうとしない。彼は何とか聞き出そうとするが、関係する人たちがそれぞれ口を閉ざしてしまう。作者の語り口は丁寧で、人物の心理変化も細やかに描いているが、謎を引っ張り過ぎる感が…