戦後から、現在に至る迄の詩を、一般に現代詩と呼んでいる。 詩の愛好者が、現代の日本で、詩が読めると言う事は、大変な僥倖だと思われる。 現代詩は、日本の至宝である。 日本の伝統的な詩である短歌や俳句に定型が有るのに対して、現代詩には、全くそれが無く、完全に自由である所に特徴が有る。 それは、20世紀初頭のヨーロッパの散文詩を手本としている所に起因しているものと思われる。 その当時のヨーロッパでも、定型詩である韻文詩を書く詩人は居なくなっていた。
『とある物語りのはじまり』 やさしい太陽と、 やさしい音と、 やさしいごはんと、 やさしい水と、 やさしい道と、 やさしい風と、 やさしい緑と、 やさしい地球と、 やさしい海と、 やさしい空気と、 やさしい言葉と、 やさしい誰かと、 やさしいあなたと。
灯 雪、の夢をみた 少年は膝を抱えて 窓際にうずくまっていた そこが一番暗いことを知っていたから少年の祖母は ストーブの上で 干し芋を焙っていた 猫は丸くなって寝ていた外は吹雪いている 父も母もまだ帰らない * 目覚めると、まだ雨が降っていた * ああ、あの家に、灯がともる頃だ ***** 自分の暮らしは、長く長く続く旅のようなものだと思うことがあります。 旅立ったところに、もう戻ることのない。 自分が生まれ落ちたところから、南に進んだ距離、北に進んだ距離、東に進んだ距離、西に進んだ距離、それぞれ、かなりの値になると思いますが、それらを全部ベクトルで足し合わせると、結局は、生まれ落ちた場所から…
『じゃあね』 差し出された愛は当然。 差し出す愛も当然。 愛されたければ愛さねばならならい。 愛されれば愛さねばならない。 こんなに色々してあげた。 だから、次は君の番だ。 これまでこんなに愛してあげた。 だから、次は君の番だ。 愛したのだから愛されなければ。 そんな交換条件で成り立つ関係。 それを“愛”だなんて、大げさですよ。 お返しする愛なんてもうありませんよ。 過去に感じた愛は、 過去の私が味わい尽くしました。 今の私には、今の愛を。 無ければそれでいいの。 じゃあね。
近しい人が創作活動を再開したという知らせを聞いた。そのことを本当に喜ばしく思うと共に、自分自身の創作はこれでいいのかとも思う。 また先日、とある詩人の投稿履歴のようなエッセイを読んだことで、もう一度あの投稿の日々に戻りたいという気持ちに駆られてしまった。 そうした外的な要因にあまり左右されずに、自分自身の創作物と向き合いたいと思ってきた。投稿生活から離れてしばらく経ち、この間に海をモティーフとした詩ばかりだった傾向から、だんだんとそこから離れて、さまざまなモティーフを用いるようになった。 そのことを単に寿ぐことはできない。血肉と化した言葉でなければ詩にはなり得ないという感覚は、吉増剛造『詩とは…
更新: ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 詩と思想新人賞、現代詩手帖賞、ユリイカ新人、ココア共和国 詩人会議新人賞 HP現代詩投稿欄 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ (※このブログはアフィリエイトしています。) 詩の賞は、大きなものは詩集単位での応募がほとんどです。 つまり応募するのに詩集を作る必要があります。 一篇の詩から応募できるものは: 詩の雑誌での毎月の(季刊なら季節ごとの)投稿で、 年間通して優秀な新人を選ぶもの、 または都道府県、市町村が開催する賞にもあります。 NEW!詩と思想新人賞 第32回受賞者 一史(かずし)さん「公転軌道」…
『まぁいいか』 今日、 僕は「まぁいいか。」と受け流した。 あの瞬間、 確かに別に拘る必要はないと、 他愛もないことだと感じたのに、 なぜかいま、 僕の中の赤血球のひとつひとつが、 着信を受けたかのように震えている。 だからといって僕には、 今さらどうにかする力なんてないんだ。 あの日、 「まぁいいか。」 と受け流してしまった自分を、 「どうにもならない。」 と何もしなかった自分を、 僕はどうやって、 許せばよいというのか。 誰か知っている人は教えてください。
雨の街 人通りなくカラスが路上を食卓にして跳ね回っているこの血を雨は流せるのだろうか ***** カラスは雑食であることを思い起こさせてくれます。 そして、知性が高い。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
詩を書くことについて ポケモンについて思うこと━動物とポケモン、人工物と自然についての私観━ 詩を書くことについて 0時になったらひとまず原稿に着手しようと決めていた。ヘンデルをイヤフォンから流しながらPCへと向かう。 ここのところ一日がかりの通院などもあり、またパートナーが多忙で、なかなか深夜の時間帯にまとまった時間を取れずにいた。 家族というコミュニティの中で、役割を担いながら文章を書いているので、どうしても制約は付きまとう。愛猫の調子も日によって変わるし、状況は常に可変的で、それに合わせる形で文章を書くことになる。 ここ数日の作業を振り返ってみると、先日までのように、日中に思うようにメモ…
『僕』 うっすらと不幸ないつもの空気に慣れた僕にとって、不幸とは劇的なもので。激しいもので。ささやかでも幸せを感じられるなら良いとはならず、劇的な不幸と同じ質量の幸せを求めてしまう。僕という人間の欲深さを侮蔑しまいと抵抗しながら、これ以上の不幸を感じないようにと生きている。幸不幸は考え方次第だとか教訓を垂れる目の前の人にはガムシロップたっぷりのアイスカフェオレを差し出して、「これも幸せと呼ぶんですよね。」とでも言っておけばいいか。甘いものはいい。たいていの人間にとって分かりやすく幸せだから。同じものを口に含むと僕の脳も分かりやすく喜び、それと同時にこんな浅い喜びに幸せを感じても良いものかと考え…
『ちょっと見えない』 冬の街は光 わたしの見る世界で光は 幾重にも瞬き いつでもイルミネーションになる 目が悪くなって ちょっとおもしろかったこと 夏の夜は星 わたしの見る世界で星は スクリーンのような 光の集合体となる 目が悪くなって ちょっと切なくなったこと 目が悪くなって 世界は綺麗になった 見たくないものが見えにくくなったから けれど 美しいものも見落とすようになった そんな気がしている 人よりも少し 見たくないものが見えず 見たいものも見えず 穢れを知らず 美しさも知らず そう生きるしかなくなってしまった そんな気がしている
はい今月もやってきました、「文芸誌を一年間読んでみるチャレンジ」参加者各位による定期報告会でござんす。 果たして繁忙期の面々は膨大な文芸の海を渡り切ることができたのか…!? その結果をしかとご高覧くださいませませ。 アクロバティックなチャレンジについてはこちらhimasogai.hateblo.jp 群像四月号・Sさん 色々あってまだ半分でした 毎年四月号には『震災後の世界』の特集があって、今回は古川日出男さんが書いている。『キカイダー、石巻、鳥島、福島』は「時間が飛ぶ感じ」がすごく魅力的 古川さんはいつもニット帽をかぶっているけれど、脱いでいる写真がカッコいい 柴崎友香さんと古川日出男さんの…
www.youtube.com 日本の首相がアメリカに公式訪問したというニュースの中で、この「YOASOBI」というワードとともに若い女性が紹介されていて、急に気になり始めた。 TVの画面に映っていたのはボーカルの女性で、もうひとりの男性が「コンポーザー」と言うことらしい。 で、「YOASOBI」が発作的に気になり始めてから早速したことは、アマゾンでCDを買うというなんとも2010年より以前のような行動だったわけです。気になるアーティストを見つけたらアルバムを聴いてみるというのが、ぼくの原則的なやり方。 それでCDが到着するやいなや、期待とともにスバヤクCDプレイヤーにセットしてスタートを押す…
詩の中の風景-くらしの中によみがえる (中公文庫 い 139-2) 作者:石垣 りん 中央公論新社 Amazon 石垣りんが近現代詩を一篇ずつ紹介しているエッセイ集である。素朴ながらも心を打つ詩が多く紹介されていて、読んでいて心から感情があふれ出しそうになる。石垣自身もそのような解説をよくしていて、詩というものは我々の堰き止められた感情をあふれ出させるものだと改めて感じた。 詩というと難解なイメージがあるが、石垣の紹介する詩は少しも難しくない。簡単な言葉で単純なことを書いている。だがそれでありながら人の心を打つ力を持つ詩が多く紹介されている。詩というものは障害を乗り越えるもの。それは我々の凝り…
2023年5月、阿吽塾から刊行された藤原安紀子(1974~)の詩集。現代詩書下ろし一詩篇による詩集懐紙シリーズ第八集。著者は宇治市生まれ。 NDLで検索Amazonで検索日本の古本屋で検索ヤフオクで検索
1974年7月、国文社から刊行された宮城賢(1929~2008)の詩集。装幀装画は安達三男。著者は熊本県八代郡氷川町生まれ。 これらの作品は、私の書いたものとしては異例に早くヘソの緒を切って落されることになった。時期的には、一九七二年一月から七三年六月までの一年半に書かれたもので、一冊に編むにあたって半年ごとに仕切りを設けてみた。Ⅰ、Ⅱ、Ⅲがその仕切りである。ⅠとⅡの間に、実生活上の転居が介在しているのだが、この転居は、上京して二十数年を経た間に私が経験したどの転居よりも、時代の現実とぶつかり合うことをしいられた。私たちは、もはや、自分の「願ふ場所」を現世での〈ついの棲家〉として選ぶことが不可…
以前から山宮允を取り上げなければならないと思っていたのだが、彼の主たる著作や翻訳を入手するに至らず、言及してこなかった。それらを古本屋で見出せなかったのもひとつの要因ではあるのだが。 それでも前回、山宮と川路柳虹が詩話会の提唱者で、大正時代の詩のムーブメントに大きな役割を果たしていたこと、及び山宮の主著ではないが、『英米新詩選』という英米詩の対訳本を購入したばかりなので、ここで一編を草しておきたい。その前に『日本近代文学大事典』の山宮の立項の前半を挙げてみる。 山宮允 さんぐうまこと 明治二五・四・一九~昭和四二・一・二二(1802~1967)詩人、英文学者。山形市の生れ。威一の三男。別名虚実…
3月、わりとあっちこっちに行ったりライヴしたりで、まあまあやることがあった。先月よりは少し減の10冊。 1.シモーヌ・ヴェイユ 田辺保訳『工場日記』筑摩書房(ちくま学芸文庫) www.chikumashobo.co.jp 生前はほぼ無名なまま、終戦を目前にして34歳で去った哲学者シモーヌ・ヴェイユ。かつて『重力と恩寵』にトライするも、その難しさと長大さに圧倒されて未だ読み切れないでいる。『工場日記』を先に読み始め、先に読み終わる結果となった。 哲学教師の仕事を休職し、未熟練工として各地の工場で働いた8か月間のルポルタージュである。マルクス主義を熱心に研究し、後には理論的な批判も展開したヴェイユ…
♬ 果てしない大空と 広い大地のその中で・・・ 歩き出そう明日の日に 振り返るにはまだ若い・・・ こごえた両手に 息をふきかけて しばれた体をあたためて・・・・♪ (『大空と大地の中で』作詞・作曲:松山千春) 昭和60年頃、大学地下食堂でハチヤ君たちと食事をしていた。 ハ「ねぇ、のりもさん、昨日のヒットスタジオ見ました?」 私「え?見てないけどどうしたの?」 ハ「きのうね、松山千春が出て『大空と大地の中で』をうたったんですよ。 よかったなぁ・・・・」 私「♪大空とぉ~~~ はてしない~~~ って歌う、あの絶叫歌?」 ハ「もぉぉぉ~~~。 ♪ はてしぃない~~~おおぞらと~ で、 歌詞がまちがっ…
井上法子「永遠でない方の火」を読んだ。 水がかたちを変えて何度も登場する。色だと青が多くて、たまに火の赤さが浮かぶ。詠まれている世界の輪郭はファジーで、主体の存在もあまり意識されない(失恋の章はべつにして)。イメージも日本的な風景に限定されなくて、地球のどこか(かなり北とか)、自然と一体になって暮らす場所がしっくりきた。定型の中で綺麗に情景が描かれている歌もあるし、音の続き方が型からはみ出てリズミカルな歌もあって、現代詩の雰囲気を強く感じた。 月を洗えば月のにおいにさいなまれ夏のすべての雨うつくしい 波には鳥のひらめきすらも届かないだろうか 海はあたえてばかり もうどこにも寄らない、淡い風を抱…
琵音、アルペジオ 変化・加速・初体験 戦争は自国民や自分の勢力内の民を相手国に殺してもらう行為。 クランク付き携帯ゲーム機playdate 彼がいうように、ある思想家を、その外形が体系的であるか断片的であるかによって区別することは無意味である。(柄谷行人『マルクスその可能性の中心』講談社文庫) 会場限定じゃないCDは水曜日じゃないとリリース出来ないんです。(UNITED MUSIC INFORMATION 2024.03) TimeOut 文字数カウントツール 結果だけに共感して連帯する人たちは、議論の進め方に関心がない。だからどんなに誤った議論の進め方がされていても結果が気に入れば連帯してし…
読書日記 2024年3月20-26日 ・辺見庸『自動起床装置』 ・シャイデル・ウォルター(鬼澤忍、塩原通緒訳)『暴力と不平等の人類史―戦争・革命・崩壊・疫病』 ・マイケル・サンデル(鬼澤忍訳)『実力も運のうち 能力主義は正義か?』 ・カール・ローズ(庭田よう子、中野剛志訳)『WOKE CAPITALISM 「意識高い系」資本主義が民主主義を滅ぼす』 ・広瀬隆『日本近現代史入門 黒い人脈と金脈』 ・二ノ宮知子『七つ屋志のぶの宝石匣』19-21巻 ・伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』 ・伊坂幸太郎『フーガはユーガ』 ・伊坂幸太郎『死神の浮力』 ・背筋『近畿地方のある場所について』 ・澤村御影『…
癒しの心で俳句する大切さを考える 児 島 庸 晃 毎日の生活のなかで他人の言葉に傷つき、社会から疎外された時、私たちはどうして自分自身を復旧回復させているのだろうか。ときどき思うことがある。私たちの青春はフォークソングに身を投じ音楽喫茶に群がっていた。いまでは喜多郎のシルクロードのテーマ―音楽に惹かれ、宗次郎や富田勲の演奏に我を忘れて浸る。ここには安らぎと癒しの心が強くある。…そのようにして自分自身を慰めているのであろうか。このような時、俳句することの意義や意味はいったい何なんだろうと思う。もっと素晴らしい社会参加があるのではないかとも。もっと良い生き方があるのではないかとも。 でも、私たちは…
3月はありがたいことに お仕事がずっと続いて、のんびり読書する時間や 気力が持てず、さらに、 読もうと思っても目が疲れすぎて ぼんやりして字が追えない というような 悲しくなるような理由でほとんど読めませんでした。 でも、 自分としては大きな収穫が。 11 草を結びて環【たま】を銜【くわ】えん草を結びて環【たま】を銜【くわ】えん (ハヤカワ文庫SF ケン・リュウ短篇傑作集 4) [ ケン・リュウ ] これが、 めちゃくちゃ面白かったのです。7つの短編が収録されていますが、 ひとつひとつ、 その世界観に入り込み、自分がその場にいるような 没入感。やはり表題作がいい。私に才能があれば、 この作品を…