以前、常盤新平さんの自伝的短編集「片隅の人たち」を読んで、当時の早川書房の雰囲気を垣間見たが、生島治郎さんのこの実名小説はその前日談と言えそう。「エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン(EQMM)」の編集長は、創刊直前に辞めた人をカウントするかどうか変わるが、都筑道夫さんが初代、生島さんが二代目、常盤さんが三代目となる。 生島さん本人は、越路玄一郎ととして登場するが、他に登場する人たちは実名で、主に作家たち。早川書房のケチな社長が「ファッツ」としてあだ名で通されている。好きな詩人の田村隆一さんがイメージ通りの人物として登場するので口元が緩んでしまった。生島さんの名前はハードボイルド系の作家…