クリスタルな生き方 1980年東京。大学に通うかたわらモデルを続ける由利。なに不自由ない豊かな生活、でも未来は少しだけ不透明。彼女の目から日本社会の豊かさとその終焉を予見した、永遠の名作。 『なんとなく、クリスタル』は大衆消費社会の勃興と、バブル経済前の日本、そして日本に忍び寄る衰退の影を描いたポストモダン小説だ。作者は長野県知事を務めたこともある田中康夫だ。この『なんとなく、クリスタル』の特徴は、時代を象徴する固有名詞の多用と、それに対する膨大な量の注釈だ。文学作品では普遍性を持たせるために固有名詞を多用することを避けたりするのだが、『なんとなく、クリスタル』は女子大生兼ファッションモデルの…