高原の地に引っ越してきてから毎日碧芙蓉こと甲斐駒ケ岳を眺めている。まだまだ残雪を纏いたいのだろうが峻険な岸壁がそれを許さない。僅かに山頂部とルンゼの様な谷筋にそれを見る。まさに如何にも剛毅にして高邁な鉄の峰だった。そこから東への長い連嶺はこれも見飽きない。一部を残して自分は甲斐駒からその東端の鳳凰三山までをテントを担いで縦走していた。地蔵岳のオベリスクも又下界から見てもよくわかる。一人ポツンと天を指している。こんな懐かしい稜線はいつ見ても心を揺るがせてくれる。甲斐駒から西にも峰は続く。鋸岳といういかにも峻険な名の通り高度感ある岩場ルートという事で体力・気力溢れる三十代四十代でも今一つその気にな…