初見演奏とは子ども時分の私にとっては(例えばピアノのレッスンにおいてのそれは)スリルであった。この映画のフレディ(パク・ジミン)にとって冒頭のそれが旅先の韓国人を使っての自分にアドバンテージがあるお楽しみだったのが、映画の終わり、形にしてみればIch ruf zu dir, Herr Jesu Christ(われ汝に呼ばれる、主イエス・キリストよ)だったのは、これが、既に在ってしまうもの(それは他者とも言える)の中でいかに自分を生きるかという物語であることを示しているように私には思われた。「典型的な韓国人の顔」のフレディがゲストハウスの受付をしているテナ(グカ・ハン)と英語で会話を交わすのに始…