大和三山のひとつ、畝傍山は古来より幾たびもうたによまれ、また祈りの対象ともなってきた。いま、その優美な山容を眺めるとき、思わず静かに手をあわせたくなるのも至極当然のことなのかもしれない。 山麓にひろがる橿原神宮の杜に、初代・神武天皇陵、第二代・綏靖天皇陵、第三代・安寧天皇陵の深い緑がつづいて、そこはさながら広大な神域の様相を呈している。 しかし、横大路をみやこから難波 (なにわ) に向かう古人 (いにしえびと) たちが畝傍山を眺めたとき、いまのわたしたちとはすこし違う印象をもったに違いない。 麓には、未だ木々に囲まれた大きな陵も神宮もなく、そこには田畑がひろがり、いくつもの集落があった。 かま…