リルはイザール侯に呼び出された。面と向かって会うのはこれが二度目。プリムローズを助けて、ここを訪れて以来、一度も会っていなかったのだ。別に珍しいことではない。末端の使用人が当主であるイザール侯に会うことなど、滅多にあることではない。母屋で働く使用人であれば、まだすれ違うくらいはあるだろうが、リルの仕事は馬飼。母屋に行く用事などない。イザール侯が自ら馬小屋を訪れることもない。 では何故、その滅多にない機会が、それもイザール候によって作られたのか。それは実際に会って、話を聞くまで分からなかった。 「……えっと……どういう答えをお求めなのでしょうか?」 イザール侯の問いに対するリルの答えはこれ。まっ…