「成田空港に着いた時、1万5000円しか持ってなかったんだ」 と私の前に座っている香港人は言った。 「浅草へ向かったよ。どこで夜を明かそうか悩んで、マクドに入った。金を使わなくても済むように、誰かが食べ残したトレイを自分の席に持ってきて、あたかも客であるかのように装ってね」 英語と中国語の言語交換イベントに参加したときに、私の周りで繰り広げられていた会話である。 30代後半くらいと思われるこの香港人は、訛りの強い北京語と英語を話した。外見はちょっぴり芸人の「ウドちゃん」に似ている。香港人の父親と、香港に不法滞在していたベトナム人の母親に連れられて、小さい頃は海外を転々としながら暮らしていたのだ…