日本の中世に謡われた庶民の歌謡集が『梁塵秘抄』なのだが、これは中世に生きた人びとの世俗的な精神世界を望見できる、貴重な伝承である。加藤周一などもそのように評価している。 ところで、2021年にNHKで放送された「にっぽんディープ紀行 “昭和”を探して〜キャバレー、遊郭 その周辺〜」で、その歌謡の行為そのものが、昭和の時代まで残存していたことを知り、驚き感じ入った。 次の有名な380番の歌だ。 遊女の好むもの、 雑芸、鼓、小端舟、大笠翳(かざし)艫取女(しもとりめ)男の愛祈る百大夫(ひゃくだゆう) 雑芸、鼓、小端舟、大笠翳(かざし)艫取女(しもとりめ)の光景は、西郷信綱によれば、「法然上人絵伝に…