知里幸恵「アイヌ神謡集」一編目の「銀の滴降る降るまわりに」の冒頭に子どもたちの印象的な呼びかけ声「ピリカ チカッポ! カムイチカッポ !」があり、岩波文庫本では「美しい鳥! 神様の鳥!」です。私はこの本で読んできたので「美しい鳥」と幸恵が記したのだと、ずっと思っていました。優れたアイヌ文法書の著者幸恵の弟の知里真志保も同じユーカラを訳していてこの箇所の一句目は「美しい小鳥!」と日本語にしています。私は、真志保の訳が学的、語法のうえでは「真」だと思います。ですが、知里幸恵が金田一京助に送った自筆の「知里幸恵ノート」(本の礎稿、北海道立図書館北方デジタルライブラリー画像7)をよく見ると、ここを「美…