8 ピンポーン。 突然チャイムの音が鳴った。 「はい」 ドアの外に声をかけながら、美和はドアノブを握る。小さくドアを開けると、玄関先に50代くらいのスーツを着た一人の男性が立っていた。 真尋が入院してから一週間が経っていた。 依然として真尋は眠り続けていた。この一週間、美和は面会のために毎日病院に通っていた。そのチャイムが鳴ったのは、午後一時すぎの自宅で、美和がちょうど外出のための準備をしていた時だった。 「警察のものですが」 男はスーツの内ポケットから黒い手帳のようなものを取り出して、美和の前に差し出した。上下に開くようなタイプの手帳となっていて、下側に「警視庁」と刻まれた記章が取り付けられ…