1968年、福島県生まれ。東京育ち。本名、石山千絵。國學院大學卒。作家。 2001年、「大踏切書店のこと」で第一回古本小説大賞受賞。 著書に、『月と菓子パン』(晶文社、新潮文庫)、『踏切趣味』『屋上がえり』(ともに筑摩書房)、『ぽっぺん』(新潮社)、『部屋にて』(角川書店)がある。 俳号、金町。
石田千さんの「箸もてば」。なんとも嫋やかな麗筆で、めし、さけ、おかずの湯気や芳気がふうわりとして芬芬と漂ってくるようです。いずれも美味しそうが詰まった掌編なのですが、格別興味を抱いたのはきゅうりサンド。 きのうの晩は、あげものとポテトサラダを食べた。はさむつもりだったトマトは、酔っぱらって、まるかじりして、腹のなかにある。それで、きょうは、きゅうりサンドとなった。 トーストは、ちょっと焦げたほうが好きで、網で焼く。ごく弱火、片面一分。塗るのはマヨネーズとマスタード。 塩玉ねぎをのっけて、きゅうりを包丁で削ぐ。レタスは、百万円の札束ほどはさむ。自家製は、レタスを存分にはさめてうれしい。またパンを…
Twitterを見ていたら「幸せな恋愛小説を教えてください」という呟きが目に入ったので、ぼんやりと考えてみたところ、西加奈子『きいろいゾウ』橋本紡『ひかりをすくう』岩井俊二『ラヴレター』が浮かんできた。 でもよく考えるとそのどれもが「幸せな恋愛小説」からはズレている…。 その人は例えとして有川浩作品を挙げていたから、たぶん私が思いついた小説ではご満足いただけないだろう。 有川浩作品はなんというか甘い。その甘さが良さだしそこが「幸せな恋愛小説」たる所以なんだろうけど、それだけでは心もとないというか不安になる。 もうちょっと苦味が欲しい。 苦々しさという重みがないと甘みに浸れず、甘々しいだけではふ…