円城塔の短編集『バナナ剥きには最適の日々』を読んだ。そこで本稿では短編『祖母の記録』について論じてみる。 ブラックボックスの構造について この短編集には「自我が箱の中に閉じ込められている」という構造が随所に出てくる。表題作においても探査球の中に主人公は閉じ込められているし、『祖母の記録』にも「僕は自分の中に居候した他人のように毎夜スクリーンを睨み続けた」という表現が出てくる。『Jail Over』においても主人公は牢に閉じ込められており、次のような文章が記されている。 わたしはこの頭蓋に閉じ込められているのであり、頭蓋は牢に閉じ込められて、牢は城に閉じ込められて、城は国土に閉じ込められて、国土…