あまりにも不利な状況証拠が揃いながらも、40年近く無実を訴えて獄死した元死刑囚。有罪の決定的証拠とされたのは生還した少年の証言だった。 襲撃と生還 1971年(昭和46年)12月21日深夜、神奈川県三浦市三崎町で岸本商店を営む岸本繁さん(53歳)と妻喜代子さん(49歳)、大津高校2年生の二女M子さん(17歳)の一家3人が刺殺される事件が起きた。 繁さんは1階事務所で喉を一文字にかき切られ、喜代子さんは入浴中に刃物で左胸などを滅多刺しにされて血まみれで死んでいた。夫妻はほぼ即死とみられ、M子さんも階段付近で右胸を刺され、出血多量が元で搬送先の病院でまもなく死亡した。 危険を察して2階窓から飛び降…