まず最初に書いておきたい。本書はたくさんの知的な刺激を与えてくれる素晴らしい一冊であり、多くの示唆に富んでいる。あえて極端に言えば、右派の自由主義と左派の社会主義と虚数軸にあるポピュリズムの3つくらいしか政治的選択肢のない絶望的な現状に、わずかに希望を抱かせてくれる。 そもそも私は家と車と生命保険を買わない主義(かつそれを表明している)であり、ミニマリストではないけれど、高級なモノは買わない。脱・私有財産という考え方は私にとって魅力的であり、かつ同調できそうなので、気になって読んでみたのだ。 監訳者の安田洋祐先生の解説にあるとおり、 現在の資本主義が抱える問題として特に深刻なのは、経済成長の鈍…