南アルプスの鳳凰三山だっただろうか。夏山の風景の中に鮮やかなピンク色が揺れていた。紫がそこに交じっていた。北アルプスの笠ケ岳を目指す沢沿いの道だっただろうか、広い沢の渡り返しでぽつんと赤紫色が夏空に浮かんでいた。欧州最高峰・モンブランを巡る長いトレッキングルートだった。イタリア国旗のたなびく小綺麗な山小屋で一夜を過ごし緩い下り坂で湿原に出た。背後には雄大な氷河があり凡そ日常とかけ離れた風景だった。その風景を深く頭に刻み込んでくれたのは、やはり湿原の縁に揺れる赤紫色だった。 ヤナギランは魅力的だ。夏の亜高山帯には欠かせない。青い空に生えるピンク色、いやそこに薄紫色が加わる。赤紫という表現があって…