(1933〜2004) エッセイスト、翻訳家、ドイツ文学者
東京生まれ。東大卒。国学院大学教授。ドイツ文学者。ホッケ、マゾッホなどの著作を訳出紹介するかたわら、マゾッホ、パラケルスス、カリオストロなどの評伝、怪物、ペテン師、錬金術師などをめぐる多彩なエッセイを発表している。「種村李弘のラビリントス」全10巻 他著書多数。2004年8月29日、死去。
エッセイ・評論
以上河出文庫
以上ちくま文庫
編集もの
このところ厠で手にしているのは、種村季弘さんの「書物漫遊記」であります が、これはめっぽう面白い。もうずいぶんと前にでた文庫本でありますが、たぶん 元版も持っているはずです。 昭和52年に隔週発行の「週刊時代」というのに連載したものをまとめたもの です。「週刊時代」なんて、ほとんど手にしたこともない雑誌ですが、あの丸元淑生 さんが編集長で、その関係で種村さんに依頼があったとあります。 書物漫遊記 (ちくま文庫 た 1-2) 作者:種村 季弘 筑摩書房 Amazon 本日読んでいたのは「我が闘争 吉田健一 流れ」という文章で、吉田健一 さんの「流れ」という短編小説を枕に、後半では自分のところにく…
テリトリー、外、内、辺境 辺境に身を置いた人たち 言葉は外と内から辺境へとやって来る 辺境としての自分 夢の言葉、言葉の夢 テリトリー、外、内、辺境 昔の話です。 「仏文学は澁澤龍彦、独文学は種村季弘(たねむらすえひろ)、英文学は由良君美(ゆらきみよし)」――そんなふうに、一部の人たちが口にしていた時期がありました。三人に共通するのは、博覧強記というところでしょうか。在野、アカデミックな場と、身を置く場所は違いましたが、それぞれが持ち味を生かしながら、いいお仕事をなさっていました。 澁澤龍彦 - Wikipedia 種村季弘 - Wikipedia 三人のなかでは、由良君美がいちばん一般的な知…
本日も夕方から古い取りよけていた新聞を整理することにです。 その昔は、新聞を切り抜いてスクラップで整理していたのですが、いつからか 取りよけるだけで、そのうち整理するわと思っていたのですが、これが何十年にも なりますと、とうていスクラップ帳に貼って整理するとは思えなくなることにです。 本日は、なかでも愛着のあるものを、さらに取りよけることにしました。結局の ところ、あの人たちは、その時代にはまだ生きていたのだなという確認をすること にです。 今から20年ほど昔の朝日新聞書評欄には、種村季弘さんが寄稿していました。 2002年6月9日には、次の本をとりあげて書評しているのでありました。 アナイス…
本作も、我が母親のスーパー積ん読文庫処分品から救出された一作。 母親に聞いたところ、生協(食品とかの宅配の)に本のカタログがあり、そこで気になる本を買うそうな。 谷崎潤一郎のイメージというと、耽美、エログロナンセンスあたりが思い浮かびます。 私も若いころ「痴人の愛」「卍」「細雪」らを読んで、驚嘆した覚えがあります。いわゆるフェティシズムのはしりといえるかもしれませんが、明治生まれの人があそこまで極端な性癖を文章として露出できることに感激したものです。といっても内容は概ね忘れてしまいましたが。 さて、本作「美食倶楽部」は、表題作を含め7作品を収録しています。 個人的に面白いと感じたのは「白昼鬼語…
東大独文科は幻想や民話といったこの世ならざるものに惹かれる人々を輩出してきた。 その始まりは、高木敏雄だろうか。高木敏雄は40代なかばで亡くなった日本での神話や民話研究の先達の一人だ。柳田国男と郷土研究なる研究誌を出していたこともある。 内田百閒も夏目漱石の弟子として始まったが、『冥土』のような幻妖な短編をいくつも残している。 昭和に至れば種村季弘の怪奇・グロテスク趣味は有名であろう。令和になっても彼のラビリンスにはまった人々はウヨウヨしている。 あまり目立ちはしないが確かな足跡を文芸批評に残したのは、川村二郎だった。 『白山の水』は泉鏡花の陽炎のような文学世界の痕跡を求めて各地をさまよう。そ…
図書館から借りている本の価格を合計すると、いくらくらいになるのだろう。 超弩級の高山宏「雷神の撥」と「周作人自伝」の2冊をあわせただけでも2万 五千円(税抜)でありますからね。 このように高額な本は、図書館から借りるからなかをのぞくことができるので ありまして、とっても自腹で買うことはできません。たぶん、当方は定価1万円を 超える本は、何冊も購入していないはずです。山口昌男さんの「ラビリントス」く らいではないかな。 それはそれとして、ややしばらく借りている高山さんの本は、借りていても さっぱり読むことができず、ちょっと読んでいるのは刺し身のつまのような二段組 のところばかりで、やはり手に余る…
孔子は小学生で知った。学級文庫の一冊に十人入った偉人伝で一人が孔子様。守旧的で礼儀に煩い先生って感じ。中学の教科書には論語の冒頭が載ってた。勉強したら復習しろとかやはり煩った。高3、澁澤から種村へ読み進め、この著で驚愕した。ある章の冒頭引用句が「朋遠方より来るー論語」だったから。 pic.twitter.com/lfJPl5huvt— 浅羽通明の古書窟/BAKENEKOBOOKS ふるほんどらねこ堂(犬派のきみには狂狷舎) (@Doranekodo) September 3, 2021 国語の授業で習った、学問好きの友人が遠くから切磋琢磨しに来るといったご立派なお話とは随分違っていた。話の通じ…
・ 浄瑠璃素人講釈 上下 <岩波文庫> 杉山其日庵 著 ; 内山美樹子, 桜井弘 編 2004年 岩波書店 ¥2,000 ・ 時と永遠 : 他八篇 <岩波文庫 33-145-2> 波多野精一 著 2012年 岩波書店 ¥2,000 ・ 宗教哲学序論・宗教哲学 <岩波文庫 33-145-3> 波多野精一 著 2012年 岩波書店 ¥1,000 ・ 風と共に去りぬ 全6冊揃 <岩波文庫 > マーガレット・ミッチェル 作 ; 荒このみ 訳 2015 岩波書店 ¥3,300 ・ デカメロン : 十日物語 全6冊揃 <岩波文庫> ボッカチオ 著 ; 野上素一 訳 2002年 岩波書店 ¥1,800 ・ …
暑くなったり寒くなったりしつつ早いもので世の中は新年度ですが、まだまだ旧年度の新刊が睨みを利かせています。年度の切れ目など、人類そして宇宙の歴史の前では何の意味も持たぬ区切りにすぎない……人類の営みとは……などと紋切り型の詠嘆をたわむれに捻りつつ、2024年3月の気になる新刊をどうぞ。 嘘つき姫 作者:坂崎かおる 河出書房新社 Amazon 2020年より、SFを中心とした様々なコンテストに入賞してきた新鋭の初の単行本が登場。岸本佐知子・小山田浩子・斜線堂有紀という豪華作家陣が推薦コメントを寄せている。 しをかくうま (文春e-book) 作者:九段 理江 文藝春秋 Amazon 今年2月に『…
本を買った。種村季弘『江戸東京《奇想》徘徊記 新装版』朝日文庫、2024江戸東京《奇想》徘徊記 [新装版] (朝日文庫)作者:種村 季弘朝日新聞出版Amazon立木康介『100分de名著 フロイト『夢判断』 自分とは何者なのか――』NHK出版、2024フロイト『夢判断』 2024年4月 (NHKテキスト)作者:立木 康介NHK出版Amazon\🆕本日情報解禁🆕/ 2024年4月期の #100分de名著 は、精神分析学者の #立木康介 さんを講師に迎えて、フロイト『夢判断』を取り上げます。テキストは鋭意準備中で、3月25日ごろに発売予定。乞うご期待!— 100min_meicho (@100mi…
『モデルプレス』の記事; 俳優・寺田農さん、死去 「天空の城ラピュタ」ムスカ大佐役など 3/23(土) 10:35配信 モデルプレス【モデルプレス=2024/03/23】俳優の寺田農さん*1が死去したことが分かった。享年81歳。23日、所属事務所が発表した。 ◆寺田農さん、死去所属事務所の公式サイトでは、寺田さんが14日未明に肺がんのため亡くなったと報告。生前について「最後まで仕事を続けながら、諦めることなく希望を持って、治療に励んでまいりました」と明かすとともに「桜の開花を待たずして帰らぬ人となりました」と伝えた。なお、寺田さん本人、遺族の意向により近親者のみで家族葬を執り行ったとも説明。「…
・猪木武徳. 地霊を訪ねる—もうひとつの日本近代史. 筑摩書房, 2023, 384p. www.chikumashobo.co.jp 経済史の先生が書かれた、紀伊國屋じんぶん大賞にも選ばれた本。川瀬巴水のカバーも素敵。国内の鉱山を訪ね歩き産業と地域の関係性を考えつつ、その地の亡き人々の声に耳をすますというテーマも興味深い。だから手に取ったのだけれど、それぞれの土地についての記述が、えっ? これで終わり? というくらいにわずかであり、おじいさんが、わたしはここにもいったことあるよ、あそこにもいったことあるよ、と、これまでの人生で行ったことある場所についてサラサラと喋ってくれた、というだけの本だ…
1/1(月) 本当のところ愛する者だけが相手を傷つけることができるのだ。 (ホルヘ・ルイス・ボルヘス『闇を讃えて』斎藤幸男訳 水声社 p8) 誤りだけがわれわれのものだ。 (p11) これらのしるしはわたしの永遠からこぼれ落ちるのだ。 (p21) われらはわれらの記憶、常ならぬ形象にあふれた空想の博物館、破れた鏡の寄せ集めにすぎない。 (p29) 代る代るに演じてきた自分をもはや覚えていないわたしは単調極まりない壁と壁とが取り巻く厭わしい道、運命を今なぞり行くのだ。 (p38) わたしはあなたが知らずに救う人々なのだ。 (p103) 1/2(火)その1 『辻邦生 全短篇1』(中公文庫 1986…
日曜日。晴。黄砂か。 ドラッグストア。スーパー、野菜が高い。なんでこんなにというくらい。老父の畑の野菜は、端境期なんだよねー、それで買わざるを得ない。 まわりの低山に山桜のピンクが点在する。一気にだな。 庭が花で埋め尽くされている。モンシロチョウだけでなく、アゲハチョウが飛び始める。 昼。曇。 長時間、ごろごろぼーっとする。空疎。この空疎さこそがわたしでないと、誰にいえよう。何の価値もない、意識の空白であり、たんなる怠惰である。こんなことをいくら繰り返したところで、精神の高みに至ることなどまちがってもあり得ない。意味のあることばかりしておられる忙しい現代人である皆さんに、何やら申し訳ない気持ち…
昧爽起床。風雨強し。 朝食に昨日買ってきたドーナツを食う。 NML で音楽を聴く。■モーツァルトのピアノ三重奏曲第二番 K.498 で、演奏はサバディ、オンツァイ、グヤーシュ(NML、CD)。実直で地味な、これで充分な演奏。自分(たち)は才能ある演奏家なんだぞ、みたいな衒いがまったくなく、気持ちがよい。いわゆる「ケーゲルシュタット・トリオ」で、もともとクラリネット、ヴィオラ、ピアノという特殊な編成だが、ここではクラリネットの代わりにヴァイオリンで演奏されている。 ■ブラームスの交響曲第四番 op.98 で、指揮はリッカルド・ムーティ、フィラデルフィア管弦楽団(NML、CD)。マジメで、ダサく、…
未明起床。雨。 画期。 NML で音楽を聴く。■モーツァルトの交響曲第四十番 K.550 で、指揮はチャールズ・マッケラス 、スコットランド室内管弦楽団(NML、CD)。飛び抜けている。■バッハの 二つのヴァイオリンのための協奏曲 BWV1043 で、ヴァイオリンはヒラリー・ハーン、マーガレット・バーチャー、指揮はジェフリー・カヘイン、ロサンゼルス室内管弦楽団(NML)。緩徐楽章がよかった。両端楽章は速めのテンポでちょっとせわしない。J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集 (SHM-CD)アーティスト:ヒラリー・ハーンUniversal MusicAmazon■ストラヴィンスキーの歌劇「結婚」(…
14年前の過去の自分に再会、長く続けているとこんなこともある 雨の日はソファで散歩 (ちくま文庫 た 1-12) 作者:種村 季弘 筑摩書房 Amazon なんだか、最近書店で見かけて買ってしまい、半分ほど読んだところで昔読んだことがあったような気がして、何気なく自分のブログを検索したところ・・・ブログにも書いていた・・・↓ うーむ 「大酒大食の話」の中に菅茶山の書いたものとして 「すべての酒は小杯にて一日半日ものむは、覚えず量をすごして つもりては病をなす、大杯にておのれが量だけ一度に飲むものは、酒の力一時に出つくす故に害なし」。P100 2合なり3合と自分の量を決めて、サクッと飲んで終わり…
1989年の初夏だろうか、東京・六本木のギャラリーで画家の木葉井悦子さんから上條陽子さんを紹介された。「種村季弘さんの友だち」という木葉井さんの紹介に上條さんは反応し、『上條陽子画集』PARCO出版局1989年5月26日 第1刷を私に恵まれた。未知の画家の3500円の画集のお礼をしなくては、と三日間じっくりと画集を見つめていた。詩人の天沢退二郎が文を寄せている。彼の著書『紙の鏡』の「つげ義春論」に感心した記憶があった。が、この「この人間たち──上條陽子の絵に」の詩的文章には感心しなかった。違うな、という印象。私ならこう書く、と三日三晩うんうん唸りながら手紙を綴った。九月だったか、上野のギャラリ…
・ 絵で旅する ローマ帝国時代のガリア ジェラール・クーロン, ジャン=クロード・ゴルヴァン他 2019年 マール社 ¥2,500 ・ 信貴山縁起絵巻 : 国宝 <サントリー創業100周年記念展 信貴山縁起絵巻 4> サントリー美術館 編 平成11年 サントリー美術館 ¥2,000 ・ 英国史のティータイム 森護 著 1993年 大修館書店 ¥800 ・ ヨーガ奥義書 第5巻 (クンダリニー・ヨーガ) 成瀬雅春 著 1997年 出帆新社 ¥2,200 ・ コンスタンティヌスの生涯 西洋古典叢書 エウセビオス著 秦剛平訳 2004年 京都大学学術出版会 ¥2,000 ・ 中世思想原典集成 精選1…
・ ゲオルク・フォルスターコレクション : 自然・歴史・文化 ゲオルク・フォルスター 著 ; 森貴史 共訳 2008年 ¥12,000 関西大学出版部 ・ アルベール・ベガン著作集 第1巻 ロマン的魂と夢 アルベール・ベガン [著] ; 小浜俊郎, 後藤信幸共訳 1977年 ¥1,800 国文社 ・ ヴァーグナー試論 テオドール・W. アドルノ 著 ; _橋順一 訳 2012年 ¥2,200 作品社 ・ ルドルフ・シュタイナー教育講座 1 教育の基礎としての一般人間学 "高橋巌 訳 " 1999年 ¥1,000 筑摩書房 ・ ラカンもしくは小説の視線 赤間啓之 著 昭和63年 ¥1,200 弘…
鏡花文学賞とは 「泉鏡花文学賞」と「泉鏡花記念金沢市民文学賞」の2つの賞からなります。 鏡花文学賞条例 第1条より 幾多の文学者を輩出した本市の文化的伝統の継承発展を図り、市民の文化水準の向上に資するため、すぐれた文芸作品に対し、鏡花文学賞を贈与するを目的とする。 泉鏡花文学賞とは 金沢市が主催する文学賞 全国規模の地方自治体主催の文学賞としては、全国に先駆けて昭和48年に制定された文学賞 昭和48年5月 泉鏡花文学賞制定趣意書より 金沢に生まれ、近代日本の文芸に偉大な貢献をなした泉鏡花の功績をたたえ、あわせて鏡花文学を育んだ金沢の風土と伝統を広く人々に認識していただき、文芸を通じ豊かな地域文…
先週の日曜日は放埒に明け暮れた一日だった。 放埒と言っても、酒や女に溺れていたわけではない。それ以外に言葉が思いつかなかっただけである。 一日の始まりは書店だった。週末、職場のビンゴ大会でQUOカードをいただいたので、それを元手に豪遊しようと意気込んでいた。 書店散策は一人より誰かと一緒の方が楽しいので、友人Kを誘い船橋のジュンク堂へ。 千葉では津田沼丸善と雌雄を決する巨大書店であるが、ここで書籍を買うのは初めてだった。 まずは友人の書籍選びである。QUOカードを手にした私は羽振りが良い。文庫一冊を奢ることにした。友人が手に取ったのは湊かなえの『未来』。友人は生粋の湊かなえファンなのであった。…