流れる (新潮文庫) 作者:文, 幸田 新潮社 Amazon 『流れる』幸田文著を読む。 舞台は東京・柳橋、斜陽がかった芸者の置屋。そこで女中として働くことになったワケありの素人の中年女性が足を踏み入れることから小説は始まる。彼女の目を通して、柳橋界隈や花柳界の暮らしぶりやしきたりなどが実に克明に綴られる。たとえば、この町は家族ではなく、単身者の寄り会い所帯ゆえに、八百屋も魚屋も惣菜屋も一個からばら売りしてくれる、お歳暮の贈答品は、「もとの店へ持って行って」「同値で何かほかのもの」と取り替える、など。 また、主人公の素性を見抜く置屋の女主人公や道楽者で粋がる亭主、老妓、売れっ子芸妓、怠け者の女…