イザナミの眠る山、比婆山。その近くにある竜王山の登頂に失敗し、深刻な事態となった。私は神に祈る以外、どうすることもできなかった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「先生、Tの様子がおかしいです。」部長のMが最後列から叫んだ。雪の中をよたよたと駆け寄ると、Tが抱き起こされていた。Tは薄目を開き、喋ろうとするがろれつが回らない。濡れたGパンの裾には沢山の雪が固まり着き、体温がかなり低下していた。私は背筋がスーッと寒くなった。 竜王山は因縁の山だ。最初に登ったのは、大学1年の初冬だった。当時マスコミを賑わせた「怪獣ヒバゴン」を探そうと、探検部のメンバーで比婆山一帯を歩いた時だ。雪の上に動…