「あの人がお金を取ったからって、何にも不思議はありゃしません」とグルーシェンカは軽蔑するように、毒々しくにたりと笑った。「あの人はしょっちゅうわたしのとこへ、お金をせびりに来てましたわ。一カ月に三十ルーブリくらいずつ持って行くんですもの。それも大ていおごりのためですの。わたしがお金をやらなかったら、どうしてあの人が食ったり飲んだりできるものですか。」 「どういうわけで、あなたはラキーチン君にそう寛大だったのです?」裁判長が激しく身動きするのにもかまわず、フェチュコーヴィッチはこう追及した。 「だって、あの人はわたしの従弟なんですもの。わたしのおっ母さんとあの人のおっ母さんとは、親身の姉妹なんで…
たことであります。つまり、もはやこれ以上要求しない、父親との遺産争いはこの六千ルーブリでけりをつける、とこういう意味の書面が残っています。そのとき彼は初めて、高尚な性格と立派な教養をもった、一人の年若い処女に出くわしたのです。ああ、私はここで詳しく繰り返すのをやめましょう。これはあなた方がただ今お聞きになったとおり、名誉と自己犠牲の問題ですから、私はもはやあえて言いますまい。浮薄で淫蕩ではあるが、しかし真の高潔と高遠な理想の前に跪いた若者の姿は、われわれの前に非常な同情の光をもって照らし出されたのであります。ところが、そのすぐあとで突然、同じこの法廷において、メダルの裏面が現われました。私はこ…