去年(2023年)の暮れに近い時期のことである。 2022年に亡くなった映画監督の崔洋一を偲んで放映された『月はどっちに出ている』を、BSシネマで久しぶりに観た。 最初に観たのが1990年代だったから、30年ぶりである。 細部はかなり忘れていたが、それでもやはり、見直して面白い映画だと思った。 在日コリアンのタクシー運転手(岸谷五朗)と、フィリピンパブのホステスであるコニー(ルビー・モレノ)の恋愛を中心に、三流タクシー会社の従業員の間で繰り広げられる「事件ともいえないような “事件”」が淡々と描かれる。 根っこには、在日コリアンが味わってきた「差別への怒り」、「生活苦」、「怨念」、「諦念」 ……