398.『道草』番外編(4)――長谷川如是閑『初めて逢った漱石君』(2) (前項より続き)長谷川如是閑『初めて逢った漱石君』(つづき)Ⅴ 明石の講演旅行(2年後のイベントを挿入) 其年だったか翌年だったか君は明石に講演に来た時も、海岸の料理屋で、平気で何でも食べて、とうとう飯蛸まで食べようとしたから、私は猛烈に攻撃した。でもとうとう食ってしまったようだったが、講演を終わって東京へ帰らぬうちに、前の病気が再発して、大阪の湯川病院へ入れられた。 其時ほど私を狼狽させたことはない。病気は、医師が必ずしも恢復を保証しない位重大なものであった。兎に角も夫人に電報で下阪を求めて、私は社の販売部長の小西氏と…