3.袋小路で…… とはいえ、条件の面から見ればそれは自明ですらある。なんとなれば、彼のような労働者としての当然の感覚を活かすべき方途が、彼にとっては存在してこなかったからこそ、なのだ。 彼のこれまでの労働者としての経験のなかでは、同様の、いやそれ以上の理不尽な処遇を受けることが多々あったに違いない。彼はどのようにそのような状況をくぐりぬけてきたのだろうか。彼自身が、あるいは彼と同じ条件におかれた他の労働者が会社=資本にたいして異議を唱えたこともしばしばあったに違いない。だがその異議は、よほどの好条件にささえられないかぎり、実現されることはない。現存する労働法規によって保障されている権利の実現で…