若葉満ちて 薫風と呼ぶにはまだ早いようなひんやりとした風が吹いて、 なかなか来ない初夏を待っています。それでも窓から見える若葉の緑は 早々と深まり、季節は気温とは関係なく流れていきます。 実際に目に見えるもの、肌で感じるものだけが世界を進めているのでは ないということを、若葉を眺めては理解しようと試みています。 早春に萌え出た新芽は、光と潤いに満たされて青々と葉を広げています。 新緑とひとくちにいっても草若葉、蔦若葉、葛若葉、柿若葉、萩若葉と それぞれに毎年、色合いの異なる緑色を見せてくれます。その多様な色を 見分けていくのはぜいたくな時間です。桜の花と同じように、新緑は あっという間に消えて…