ユイが紀美野町に来てから初めての冬。 ユイは、リナと共に運営するウェブサイト『紀美野の智慧』の記事を書いていた。キーボードを打つ指先は、もう都会にいた頃のように震えることはない。窓の外では、雪がちらつき始めている。 ユイの体は、この町の氣にすっかり馴染んでいた。土を耕し、太陽を浴び、新鮮な空気を吸い込む。ミサキの作る薬膳料理で、体の氣の巡りは良くなり、自律神経も安定した。都会では常に感じていた、心臓のざわつきも、漠然とした不安も、もうユイの中には存在しなかった。 ユイは、ふとパソコンから顔を上げた。 都会での人生は、常に誰かと競い合い、何かを「奪い合う」ことだった。仕事の成果、SNSの「いいね…