幻色江戸ごよみ (新潮文庫) 作者:みゆき, 宮部 新潮社 Amazon 江戸を舞台にした12の短編が集められている。いずれも市井の片隅に生きるつましい庶民の物語だ。 これを読んで、人は皆「死にたくない、生きたい」と願っているのだと思った。生き延びるために、愛する者を永らえさせるために必死になって働く普通の人たちのいとおしさ、哀れさ、孤独が胸を打つ。救われない気持ちになる悲しい話が大部分だ。 しかし読後感は悪いものではない。それは登場人物たちへ向ける作者のまなざしが温かいからだ。しんと心に沁みる柔らかな冬の日差しのような視線だ。 もちろん創作された人物たちだけれど、登場する人たちと同じような人…