緊急警報放送

(サイエンス)
きんきゅうけいほうほうそう

大地震、津波などの災害や都道府県知事の要請に応じて、NHKをはじめとした放送局各局が行う放送のこと。「ピロリロピロリロ」という独特の音(FSK変調の信号音)で始まり、同じような音で終了する。この音を元にして、対応受信機は自動的に起動、受信を開始し、聴取者に警報を知らせる。略称はEWS

概要

緊急警報放送はAM・FM・地上アナログ・地上デジタル・BSアナログ・BSデジタルなど、ほとんどの放送メディア・チャンネルで実施されるが、緊急警報放送受信機の多くはNHK FM、NHK総合(アナログ)、NHK教育(アナログ)の電波を受信して起動するものである。また、デジタル放送ではFSK変調による信号は意味がないものの、視聴者に警戒を促すためにそのまま放送される。デジタル放送では、放送信号の中に緊急警報放送識別子が準備されている。当初はこの信号により自動起動するデジタルテレビやチューナーは存在しなかった*1が、近年ではソニーのBRAVIA、松下電器のデジタルタウおよびVIERAの上位機種などに自動起動対応の機種がラインナップされている。ただし、初期設定では自動起動がオフになっている場合もあり、またデジタル放送はアナログ放送と比較して運用実績が浅いこともあるため、利用には十分な留意が必要である*2。また、ケーブルテレビ受信者が利用するセットトップボックス(STB)にも緊急警報放送に対応したものがある(松下のTZ-DCH800など)。

また、ワンセグ対応携帯電話でも緊急警報放送識別子を利用して自動起動が行われる実装が進む見込みである。ワンセグ対応端末は多くが電池式駆動で、かつ単体稼働できるものが多いため、災害時の迅速な情報提供手段として注目される。なお、現状で発売されているワンセグ対応の携帯電話に、緊急警報放送に対応した機種は未だ存在しない点に留意すること。ワンセグ対応受信機でも、待機電力が問題となっていたが、2006年のNHK技研公開における発表で解決案が提示されている。

類似する放送

以下の放送は緊急警報放送と同様にとらえられるが、実際には別物である:

  • 臨時ニュース
  • 地震速報、ニュース速報(放送局主調整室、ないし報道フロアより直接送出されるテロップ)
  • 緊急地震速報

(NHKにおける)臨時ニュースとは、通常国家における一大事(内乱、政変などを含む)が起こった際に放送されるもの。もっとも最近放送された臨時ニュースは2011年4月11日17時16分に発生した最大震度6弱の地震の際のもの*3。臨時ニュースではFSK変調の信号波ではなく、独特のチャイム音が流される。このチャイム音は、古くは1945年のポツダム宣言受諾による終戦の詔書の発布の際にも用いられている。

地震速報やニュース速報は放送局内の内部規定に基づき、現在放送されている番組の進行とは関係なく「今伝えなければいけない」という判断が下された場合(この判断を下す人間は放送局により異なる)に、放送局の主調整室から、現在放送されている番組にかぶせる形でテロップとして送出するものである*4。NHK(教育放送局除く)、および地上波民放、BSデジタル放送各局(有料放送チャンネルを除く)ではおおむね行われる。また、在京民放系の影響を強く受けているCS専門放送チャンネルの一部(フジテレビ721・739、日テレニュース24、G+など)でも地震速報、ニュース速報が行われることがある。そのほか、スカイパーフェクTV!の多くのチャンネルでは、津波情報などのアイコンを画面に表示して注意を呼びかける仕組みを整えている(すべてのチャンネルが対象ではないのに注意)。

これらの放送はいずれも法律で定められたものではなく、あくまで報道の一形態にすぎないところが緊急警報放送と大きく異なる。一方、緊急警報放送は、日本放送協会、つまりNHKが災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法における「指定公共機関」に指定されていることを根拠に、事実上緊急警報放送を必ず行うべき放送局として法令で規定されている。その他の民放各局については法令での強い定めはないが、地元NHK局との関係などの事情により緊急警報放送発報設備を常備する局も多い*5

緊急地震速報については後述する。

実際に放送された事例

発生日時 地震 最大震度 警報
2011年4月11日17時16分 宮城県沖を震源とする
平成23年東北地方太平洋沖地震の余震
6弱 津波警報
2011年4月7日23時32分 福島県浜通りを震源とする
平成23年東北地方太平洋沖地震の余震
6強 津波警報
2011年3月11日14時46分 平成23年東北地方太平洋沖地震の本震 7 大津波警報
2010年12月22日 父島近海地震 津波警報
2010年2月27日17時34分
(2010年2月28日9時33分発令)
2010年チリ地震 - 大津波警報
2010年2月27日5時31分 沖縄本島近海地震 5弱 津波警報
2007年1月13日13時23分 2007年千島列島沖地震 3 津波警報
2006年11月15日20時14分 2006年千島列島沖地震 2 津波警報
2004年9月5日23時57分 紀伊半島南東沖地震 5弱 津波警報
2003年9月26日4時50分 平成15年十勝沖地震 6弱 津波警報
2002年3月31日 台湾近海地震 津波警報
2002年3月26日 石垣島近海地震 津波警報
1998年5月4日8時30分 石垣島南方沖地震 津波警報
(1996年2月17日21時10分発令) 1996年ニューギニア島沖地震 - 津波警報
1994年12月28日21時19分 1994年三陸はるか沖地震 旧基準6 津波警報
1994年10月4日22時22分 1994年北海道東方沖地震 旧基準6 津波警報
1993年7月12日22時17分 北海道南西沖地震 旧基準6 大津波警報


千島列島東方沖地震、紀伊半島南東沖地震は幸い大きな被害とはならなかったが、東北地方太平洋沖地震本震と平成15年十勝沖地震は地震と津波により実際に被害者が出ている。
一方、1995年1月17日の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では兵庫県知事より緊急警報放送の発令要請があったとされるが、NHKには送出記録が残っていない。
また、新潟県中越沖地震では緊急警報放送は行われず、(震度6弱以上の地震に伴う)臨時ニュースのみが放送された。(津波注意報だけが発令されたため)

実際の運用

大地震が発生し、かつ/または津波の到来が予期される場合に送出される。NHKでは、すべてのチャンネル、つまり:

  • 地上デジタルテレビ放送
    • NHKデジタル総合 (DG)
    • NHKデジタル教育 (DE)
  • BSデジタル放送
    • NHKBS1(101ch)
    • NHKBSプレミアム(103〜104ch)
    • NHKデータ放送(70xch)
  • 超短波ラジオ放送
    • NHK-FM
  • 中波ラジオ放送
    • NHK第1
    • NHK第2 (英語放送が行われる)
  • デジタル超短波ラジオ放送
    • NHK/VICS 91 (9101ch、実用化試験放送中)

以上の8波でのサイマル放送が行われる。なお、在留外国人のために、テレビジョン放送における音声多重放送、NHK第2(中波)は英語放送が行われる。
民放に関しては、こうした決まりは基本的にない。

実際に大災害が発生した後の放送の対応

その後、災害報道が中心となるのはもちろんだが、電話の輻輳やネットワーク、交通機関などのダウンにより、家族や友人、職場などへの連絡が取りづらくなることがあるため、NHKでは教育放送局を利用して安否情報を放送することがある。実際に行われたのは阪神・淡路大震災が初で、その後中越大震災でも行われた。中越大震災ではBSデジタルと地上デジタルテレビ放送のデータ放送でも安否情報が流された。

実際に緊急警報放送に備えるには?

もっとも手軽なのはラジオ型の受信機を設置することである。以前は防災の日などに量販店で棚卸しセールが行われることがあったが、現在では入手が困難になりつつある。FSKのため自作も可能ではある、詳細は本項目のリンク先を参照のこと。

今後の実装

2006年のNHK技研公開において、緊急警報放送に対しての今後の実装の研究成果が発表された。このうちひとつは先述したワンセグ受信機の自動起動で、もうひとつがテレビリモコン型の受信機であった。これは、アナログ放送波の音声(NHK総合とNHK FMと思われる)を受信し、緊急警報放送の信号が発せられると、リモコンから電源ONの信号が発せられ、自動的にテレビが付く、というものである。比較的単純で効果が上がるため、アナログ放送からデジタル放送へ移行する過渡期においての実用化が期待される。

代替手段は?

また、インターネットへの接続性がある場合は、放送だけに頼らず、ネット経由で情報を入手するのも一つの手である。といっても、Webサーバーへの集中アクセスによりサーバーダウンを引き起こす可能性もある。これを回避するための試みがP2P地震情報(Windows向けP2Pクライアント)である。P2P地震情報は2008年2月現在開発中のソフトウェア(β版)であり、内容は全く無保証ではあるが地震災害に対しての一般の関心を集め、草の根的な情報交換が行われている上、災害によるネットワークの分断にも比較的強いシステムとして開発が進められている。

一方、気象庁による新しい速報システムの仕組みである緊急地震速報システム(旧称はナウキャスト地震情報*6とリアルタイム地震情報*7で、これらを統合したもの)も稼働を開始している。このシステム自体は緊急警報放送と競合するものではなく、緊急警報放送が津波などの比較的時間的余裕のある(といっても一刻も早く対策をしなければ危険なことに違いはないが)災害についての情報を周知するシステムである一方、緊急地震速報システムは「あと何秒後に大きな揺れが来る」という予測を伝えるもので、受信者には何らかの対応を促すものであることには間違いないが、それぞれの情報の利用方法はそれぞれ異なることに留意したい。緊急地震速報は鉄道などの交通機関や地方自治体などの高度利用者のみならず、個人向けへの配信も行われている。最も入手が容易な手段としてはラジオ・テレビで、インターネット上でも発報をほぼリアルタイムに通知してくれるアプリケーションが開発されている。詳しくは緊急地震速報の項を参照のこと。

関連キーワード

*1:主に待機時の消費電力が問題になっていた。

*2:発報の頻度から考えて、現状では実働事例があまりないと考えられる。起動すると取扱説明書に書いてあっても、本当に起動するかどうかは疑問とする声もある。

*3:緊急地震速報→臨時ニュース開始→FSK変調の信号波送出

*4:番組を中断して放送されるニュースは通常報道特別番組などとされ、これらとも扱いが異なる

*5:ただし必要なときに正しく発報できるかどうかには多くの疑念の声がある

*6:気象庁

*7:防災科学研究所による

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