書棚を飾る『蠅と蛍』。 佐藤惣之助の想痕、あるいは随筆集。神保町のワゴンから五百円(ワンコイン)にて回収してきた品である。 本書の見開き部分には、 必要最低限度といった、ごく控え目な書き込みが、これこの通り為されてる。 白楊 辰澤様 と読むのであろう。 白楊――。 佐藤惣之助の雅号ではない。 では誰だ。 画家である。 本書の絵画装幀を担当したる絵描きの名。それが井上白楊である。十中八九、この人からの贈り物であったろう。 受け手側たる「辰澤様」がいったい誰を指すものか、こちらはどうにもわからない。個人的に親交のあった者であろうか? とまれかくまれ、著者謹呈は屡々見たし持ってるが、こういうケースは…