谷川渥「絵画の時間性 序説」から。《 美や芸術の脱時間性をア・プリオリに主張するならはじめから問題はない。(引用者・略)というのも、芸術においてこそ、時間の現在性というものがもっとも顕著にあらわれるからである。 》 55頁《 理由律に従い、既知のものを根拠として未知のものに向かう学問の時間的性格が過去的であり、未来の目的の実現を命令する道徳の時間的性格が未来的であるとすれば、芸術の時間的性格はまぎれもなく現在的である。そして宗教の施志向する永遠なるものを形而上学的現在と呼びうるとすれば、芸術の現在は現象学的現在と言わねばならない。それは直観に於て持続する具体的な現在である。 》 56頁《 瞬間…