「職場の人間関係を扱った作品」の第二弾は、奥田英朗『マドンナ』(講談社文庫、2005年)。40代の男性課長5人の日常がユーモア溢れるタッチで浮き彫りにされています。その年代の課長と言えば、部長という上のポストを狙える位置にいるとはいえ、仕事のやり方では、部長とは異なった立場をとることもまれではありません。一方では、部下の統率にも注力することが必要。そのうえ、老いた親の世代や大人になりかけの子どもたちともうまくやっていくことが求められる世代。いろいろな意味で、人生の中間点を過ぎたという切ない思いをあわせ持った年代に属しています。登場人物の深層心理とその動きをリアルに描写する著者の力量には驚かされ…