まったく独裁者以外の形容詞が見つからないほどの人物が、社長。顔も見たことはない、外部にさらされたことはなかったように私は思う。手渡された曲を確かめつつ、私はデスクに腰を下ろした。肩にかけたバッグを下ろすためフライングで取り付けたイヤフォンを耳から外す。 私の業務は商品の全般のデザインだ。あまりにも取扱商品の幅が広く、多種多様な商品郡が過去の履歴として展示できないほどと考えてもらえれば、想像は容易いだろうか。私は曲を流す。フロアは間仕切りが一切ない、開放的な空間をコンセプトに設計、これも社員の誰かの作品だそうだ。建築は工業製品というよりも芸術に近く、会社に独立の部門が形成されている。いつの間にや…