この間、久しぶりに作品を完成させた。 完成させたと書いたのは、未完成のものであれば、山ほど書いているからだ。しかし、そのどれもがなかなか完成までは行きつかなかった。土に植えた種のすべてが、芽を出し、葉をつけ、花を咲かせることがないように。 完成させるときはあっという間だった、とはいっても、原稿用紙二枚書くのに二時間もかかった。彼らが何を語り、何を見るのか。それらが僕にわかるにはそれくらいの時間が必要だった。 ここ二年ほど、様々な本を読んでいたけれど、特に僕が好きな作家、堀辰雄や福永武彦なんかを読んでいると、作品というのは、それが制作されなければならず、どこまでも自己還元的である、という当たり前…