行為者(エージェント)の内部と外部があることを前提とする.ある行為は行為者内部からの選択・決定によって行われているのだと考えるとき,自由意志とはこの内部に生じるものをいう.これに対し,ある行為が外部からの選択・決定によって行われているのだと考えるとき,意志があるとしてもそれは自由ではないと考えられるから,自由意志はない.
過去から導かれるもので選択・決定があらかじめ決まっているのだとするのが決定論的な考え方である.もし「過去」が内部に生じる複数の選択肢を用意し,それに基づいて内部から行為を選択・決定するのであれば,この内部に生じるものは自由意志だと考えられる.もし「過去」が外部から '刻印' されるものであり,内部条件とは関係なく行為が選択・決定されるのであれば,そこに自由意志はないと考えられる.
いずれにせよ,行為者の内外の条件との関連をどのように捉えるかによって,自由意志は存在する,しない,と議論され,哲学,神学,倫理学,法学,物理学,神経科学,など,あらゆる人間の活動と関連する学問的問題となり,自由意志という概念から議論する人の立場や世界観が表われやすい.